自白


「ガイ。私のことが好きでしょう」
質問ではなかった。
何らかの確信を持った言い方。

そんな突然のセリフにジェイドが何を言ったのか良く理解できなかった。
正確にいうならば、理解したくなかったのだ。

それでも自分の心の乱れを悟られないように、いつも通りを装って言葉を返す。
自分でも嫌になるほどこういう嘘は得意だった。
「そりゃあ、嫌いだったら一緒に旅なんて出来やしないよ」
不自然なところは一つもない。
確実に騙せたはず……

「そういう意味ではないと貴方自信がよくわかっているのではないですか?」
あっさりとかわされた。
俺が内心うろたえていることすらもジェイドにはお見通しなのだろうか。

きっと自分が必死に話をそらそうとしても、その赤い瞳でまっすぐに見つめてくるのだろう。
到底叶うはずもない。

俺は一つため息を付く。
「ふぅ、恋愛感情で好きだ。とでも言えば満足かい?」
「否定しないのですか?」
「あんたが話を振ってきたんだろうが。それに否定したところで意味もないしな」
ジェイドに嘘は通用しない。
嘘に騙されているという嘘を平気で出来るのだこの人は。

「それともあんたのことが嫌いだとでも言って欲しいのかい?」
「まさか。そんなことたとえ嘘でも言われたくありませんよ」
どうだか。
最低なことに俺はこのジェイドが好きであることを否定することは出来ない。
けれど、ジェイドから愛の言葉を囁かれたとしても気持ち悪いとしか思えないのもまた事実。
実際、ジェイドが俺に好意を抱いているとも思えない。

「で、あんたは俺に好きだといわせてどうしたいんだい?」
半ば憎しみをこめて睨みつける。
確かにジェイドは好きだが、今の状況では憎くも感じてしまう。
ただの八つ当たりにといってしまえばそこまでだが。
正直のところ気まずいのだ。
まさかばれているとも思っていなかったので、
こんなこと想定したことなかったのだ。
対処方なんて知るよしもなく。

「随分と怖い顔ですねぇ」
「話をそらすな」
話はそらしたいが、
しっかり最後まで話しておかないとジェイドを見て逃げ出す日が来てしまうかもしれない。
平常心を保っているように見えるかもしれないが、
実のところ、消え入ってしまいたいほど恥ずかしい。
時間が経てば経つほどその想いは強くなるのだろう。
嫌だな、それは。

「では、私の目を見て真剣に言ってくれますか?」
「はい?」
多分この流れだと、俺に真正面から告れと言っているのだろうが……
ジェイドが何をしたいのかさっぱりだ。
何を企んで……
「別に深いことは企んでいませんから、気楽にどうぞ」
「……」
胡散臭い。
深いということは、少しぐらいなら企んでいるのだろうか。
あの笑顔がよりいっそう怪しい。

「はぁ、好きだ」
「駄目です」
くっ、真剣にってか。
そんなの恥ずかしいに決まってるじゃないか。

「……ジェイド」
「何ですか?」
「大嫌いだっ!」
やけくそに叫んで部屋を出て行くことにする。
くそっ、なんであんな奴好きになったんだか。
絶対に好きだなんていってやるものか。

「ガイ…そんなにお仕置きされたいですかぁ?」
にこにこと胡散臭いほどまでの笑みを浮かべながら俺の腕を引っ張るジェイド。
腕、外れるかと思った。

「痛い……」
「大丈夫ですよ。貴方マゾですから」
「何だよそれは」
俺は別にマゾじゃないぞ。
サドだと思われる人間を好きになったからってなぜマゾにならなくてはいけないんだ。
ではなくだ。

「手、離して……」
「駄目です。貴方がちゃんと言葉にしてくれるまで離しません」
言葉にしたじゃないか。
好きだって。

「……き…」
「聞こえませんよ?」
「ちっ、好きだっ!好きだから何だってんだ!男が好きで悪いか!でも別にホモじゃないからな!女の子だって大好きだ!」
「ガイ、落ち着いてください」
「…好き……これで十分だろ?」
もう勘弁してくれ。
何か変なことまで口走ってしまったような気がするが、
気にしないでおこう。
一生引きずりそうだ。

「はい。十分です」
「……で?」
「で、とは?」
「俺に自白させることだけが目的じゃないだろう?」
「気付きませんでしたか?」
「何に」
イライラしてきた。
逃げたいのに旦那は一向に腕を離してくれそうにもないし。

「好きです」
「はい?」
「……貴方はもう少し態度を改めたほうが良いと思いますよ」
そんなことを言われても、唖然とするしかないだろう。
いくら想い人に好きだといわれても、あのジェイドじゃ真実味に欠ける。

「好きでもない人に無理やり好きだといわせる物好きが何処にいるというのですか」
「ここに」
「……ガイ。貴方はそんなにお仕置きされたいのですか」
「いや、そういうわけじゃ」
だって。そうだろう?
誰が信じられる。
誰が信じる。
俺は信じない。
信じれない。
夢にだって見たことない。
そんな夢みたいな話。

「頭が痛くなってきた」
「何でですか。そこは喜んでくださいよ」
「どうしてお仕置きされることに喜ばなくちゃいけないんだ」
「あぁ、やはりお仕置きされたいんですね」
「いや、だから……」

「そんなに信じられないのなら、何度でも言いますよ。愛していますガイ」
ああ。叶わない。
この人には負けるしか出来ないのだ。
好きだと気付いてしまったその瞬間から俺が勝てるはずがなかったのだ。

静かに自分の顔をジェイドの胸に沈めた。





end




あとがき
最初はギャグにするつもりはなったのですが、
恥ずかしがるガイもいいよな…
などと思ってしまったが最後。
つい暴走してしまいました。
自分は満足です。
最初は、本当にジェイドが好きなのか?
と疑問に思うようなガイを書きたかったのですがね。