きっと…


偶然だった。
仕事も休みで暇だったから外に出た。
そして、何となくでお店に入った。
だから、そこでジェイドに出会ったのは本当に偶然で。。
その上、ジェイドが彼女かと思われる女性と一緒にいるのもまた偶然。
目があってしまったのも偶然……

女性と一緒に歩いているジェイドと目が合ってしまったというのは本当に奇跡的な確立の出来事だったのだろう。

「ぁ…………」
俺は一瞬固まった後、その場から逃げ去るように立ち去った。
そうだよな。ジェイドのあの年で彼女がいないほうがおかしいよな。
そう考えながらも、驚きを隠すことは出来ず、
家についてからも、あの女性に微笑みかけたジェイドの顔が忘れられなかった。



次の日。
ブウサギの世話をしながらもジェイドのことを考えた。
なぜ忘れられないのだろう。
別に俺には関係ないことだ。
なのに気になってたまらない。

「はぁ……」
「随分と陰気くさいですねぇ」
「ジェイド!?」

驚いた。
陛下の部屋に何のようだ?
今は陛下はいなくて俺とブウサギだけだぞ?
「あんた、まさかブウサギと戯れにきたのか?」
「気色悪いことを言わないでください。どこぞの陛下じゃあるまいし」
心底から嫌そうに眉を顰められた。
まぁ、そうだよな……。

「じゃぁ、何のようなんだ?」
「そこでなぜ貴方に会いに来たという発想にたどり着かないのでしょうね」
「俺に会いにきたのか?」
それまたなんで。
俺に用事とは何があるのか。
しかもこんな時間に。

驚いて口が開きっぱなしになってしまった。
「間抜けな顔ですね」
「うっ、煩いなっ」
恥ずかしくて顔が赤くなってしまった。
なるべくばれないようにと顔を背けてみたがばればれだろうな。

「で、俺に何のようだ?」
「ただ会いに来ただけですよ?」
「へ?」
俺に?何で?ジェイドが?

「やっぱりブウサギと戯れに……」
「殴りますよ?」
「いや、冗談だって!」
何か本気で殴られそうだった。
というか殺されかねないオーラを発していたぞ!?

「ふう、そういえば、昨日どうしたんですか?」
「っ!」
びくっと体が揺れた。
昨日と言えばジェイドが女性と会っているのを目撃した日……
でも、なぜ俺が動揺しなくてはいけないんだ。

「どうって…旦那こそあの女性はどうしたんだい?」
「女性?あぁ、軍の方で挨拶されただけですよ」
「そ…そうなんだ」
そうか。彼女ではなかったんだな。
ほっとため息をつく。
……って、何安堵しているんだ?自分!

「なるほど。そういうことですか」
「へ?何を納得しているんだい?」
気持ち悪いほどの笑みを浮かべるジェイドに俺は一歩、後ずさった。
同時にブウサギが鳴いた。

「いえ、嫉妬してくれたのでしょう?」
「嫉妬?」
「違いますか?」
違わないでしょう?とでも言いたげなセリフ。
正直俺は混乱していた。
嫉妬だなんて、そんなはずはないのだが、
ジェイドに彼女がいるかもしれないという事に対しての好奇心だ
と、言いきれない何かが自分の心のどこかにあった。

「いや、別にそういうわけじゃ……」
「本当に?」
ぐっと腕を掴まれて後ずさり出来なくなってしまった。
どうしたらいいんだ?俺……。

「ガイ。正直になったらどうです?」
「正直って……別に卑屈になったつもりもないんだが……」
ジェイドは俺に何をさせたいのだろうか。
さっぱり判らない。
正直のところその笑顔が怖いのだが……。

「ほら、ガイどうぞ。私はいつでもいいですよ」
「だから、何が……」
ジェイドが判らない。
意味が判らない。
この状況をどうしたら俺は脱出できるんだ?
というか、何がいつでもいいんだろうか。

「本当にわかりません?」
「そりゃあ、あれだけの会話で意味が理解できる奴はいないだろ」
俺に理解力がないのが原因ではないと思う。
ジェイドが話を省きすぎているのがいけないのだ!

「仕方がありませんねぇ」
「……」
ため息をつかれるが、
断じて俺が悪いわけではない。
呆れられる要素は俺にはない!

「好きですよ」
「…………はい?」
「ムードがないですねぇ」
やれやれとまた呆れられる。
いや、だってどうしてどういう流れでそうなる!?
これも俺の理解力がない、というわけではないはずだ。

「謝罪はキスでお願いします。ちなみに唇ですよ」
「意味わからん」
何に対して謝罪をしなくてはいけないんだ。
むしろ俺にジェイドの旦那が謝罪するべきだ。
このわけの判らない状況を作ったことに対して!

「ガイ。いい加減に素直になってください」
「だから何に対してだ」
「好きだと言っているんです。返事ぐらい言ったらどうです?」
返事?
好きに返事?
それはつまり……

「なっ!何で!?え……いや、絶対ありえないし!」
「鈍感ですねぇ」
「煩い!」
いや、だって普通そこに恋愛ごとが入っているとは思わないだろう誰だって。
特にあのジェイドだ。
同性である俺にそういう意味で好きだといっているなんて誰が信じようか。

「うろたえる気持ちもわかりますが、ここは返事を優先していただけますか?」
「……」
返事。
返事って、ごめんなさいってか?
いや、でも俺は別にジェイドは嫌いではなく。
かといって恋愛感情で好きかと聞かれれば……
あー!もうわからないぞ!

「返事がなければイエスとみなします」
「なんで!?」
「当然でしょう。少なくとも迷ってはいるということですからね」
それはもう悪魔な微笑を見せてくれた。
あぁ……今俺はとんでもない状況に置かれているのでは?

「……ジェイドなんか嫌いだ」
「嘘は駄目ですよ?」
「何で嘘だと思うんだい?」
「だって、こんなに脈打ってますし、顔も赤いですからねぇ」
「うっ、嘘だ!」
「本当です」

してやったりの笑顔を見せるジェイドが憎たらしい。
でも、自分の心臓はいっそう早くなるばかりで。
「ガイ」
今度は優しい笑顔。
反則だと思った。

「俺は……」

多分ジェイドが好きなのだろう。
昨日から忘れられなかった女性に微笑みかけるジェイド。
いつも考えてしまうジェイドの事。
どれを取ったってその事実を否定する要素はないと思った。






end





あとがき
自分は告白と自覚が好きらしいですね。
ひたすらガイやらジェイドやらが告白するし、自覚はするしです。
本当は無意識にジェイドのことを意識するガイを書きたかったのですが…
何か違うような気がしますね。
また無理やり好きだと言わされてるような…
前回書いたものと微妙に似ているかもしれません。